食事をどう見直しすればいいの?
まず、塩分は1日6g未満に抑えます。
高血圧の治療でも、まず減塩することが重要ですので同じですね。
塩分の摂取を減らせば、血圧が下がり、降圧薬を減らすことも可能。
日本人の1日あたりの平均食塩摂取量は男性11.4g女性9.6gですが
(厚生労働省の平成23年国民健康・栄養調査)
これを6g未満まで減らすように努力しましょう。
この塩分には、食事で摂るすべての塩分が含まれています。
塩分は量がわかりやすい調味料として用いられるだけでなく、
いろいろな加工食品に、あらかじめ含まれているので注意しましょう。
調味料からとる塩分は1日3g未満になるようにし、
薄味でもおいしく食べられるように調理を工夫します。
基本的には、塩味を平均的につけるのではなく、1品だけに集中させて
献立にメリハリをつけると良い感じになります。
薄味の料理は、きちんとだしをとってうま味を生かす、
お酢やレモンなどの柑橘類で酸味をつけたり、味にコクのあるゴマやナッツ類
などを利用します。
スパイスや薬味、香味野菜などをアクセントにするといった工夫で、
おいしく食べることができます。
また、わかってはいるけど独り暮らしで、作るものもおっくうだ。
というときは、
最近は塩分制限食、糖質制限食の宅配メニューもネット通販で
手に入り自宅まで届けてもらえるという便利なシステムがあります。
それを、うまく利用するのも1つの手ではないかと思います。
塩分量の一例
1日の塩分摂取目安量がわかったところで、調味料や加工品にどのくらいの塩分が
入っているのかわかりにくいですね。
一例としてあげてみたいと思います。
おもな加工品の1食当たりの塩分量
ゆでうどん(1玉240g) 0.7g たらこ(2分の1腹40g)1.8g
干し蕎麦(100g) 2.2g ロースハム(2枚30g) 0.8g
食パン(6枚切り1枚60g) 0.8g 梅干し(大1個10g)2.2g
塩鮭(1切れ80g) 1.4g プロセスチーズ(6Pチーズ1個25g)0.7g
まあじ(干物1尾90g) 1.5g たくあん(3切れ10g)0.4g
おもな調味料の大さじ1杯当たりの塩分量
こいくち醤油 2.6g 中農ソース 1.0g 白みそ 1.1g
うすくち醤油 2.9g 顆粒風味調味料(和風即席だし)3.7g
マヨネーズ(卵黄型)0.3g めんつゆ(3倍濃縮)1.8g
淡色辛みそ(信州みそなど) 2.2g トマトケチャップ 0.6g
赤色辛みそ(津軽みそ、仙台みそ、越後みそなど) 2.3g
脂質の取り方
狭心症や心筋梗塞と診断されたら、食事の中でもとくに脂質の取り方に
工夫が必要です。
食べ物に含まれる脂質は、おもに肉類や乳製品に含まれる飽和脂肪酸と、
魚の油や植物性の油に含まれる不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸は、コレステロールや中性脂肪を増やす作用があり、
動脈硬化を進める傾向があるため、控えめにとるよう指導されます。
一方、不飽和脂肪酸にはコレステロールを減らす働きがあります。
さらに、不飽和脂肪酸は
一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類されます。
とくにオメガ3系多価不飽和脂肪酸は、LDLコレステロール(悪玉)
を減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やし、
血液中の脂質の濃度を低下させます。
また、血管を拡張し、血小板の凝集をおさえて、
血管が血栓で詰まるのを予防したり血圧を下げたりする働きもあり、
動脈硬化を防ぐ効果が認められています。
そのため、エネルギー量が過剰にならない範囲で、
摂取量を増やすように進められています。
オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、魚の油にふくまれる
エイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA)や
植物に含まれるαリノレン酸で、αリノレン酸は体内でEPAやDHA
に変換されます。
EPAやDHAは、サバ、いわし、さんま、など脂肪の多い青魚に豊富。
αリノレン酸は、アマニ油、しそ油、えごま油にとくに豊富に含まれています。
脂肪酸の種類と多く含む食品
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれています。
飽和脂肪酸の作用はコレステロールや中性脂肪を増やす。
おもな食品・・・肉の脂身、バター、チーズ、ラード、ヘット、やし油
不飽和脂肪酸は、さらに一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)と
多価不飽和脂肪酸に分かれています。
一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)の作用はLDLコレステロール(悪玉)を減らす。
おもな食品・・・オレイン酸:オリーブ油、なたね油など
多価不飽和脂肪酸はオメガ6系とオメガ3系に分かれています。
オメガ6系の作用はLDLコレステロールを減らしますが、HDLコレステロールも減らします。
おもな食品・・・リノール酸:べにばな油、ひまわり油、綿実油、コーン油、ごま油
オメガ3系の作用は中性脂肪・LDLコレステロール(悪玉)を減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やします。
おもな食品・・・EPA、DHA:サバ、いわし、ぶり、さんま
αリノレン酸:アマニ油、しそ油、えごま油
動脈硬化を予防するには、脂質のとり方に注意を払うと同時に
コレステロールの対外への排出を助ける食物繊維や、
LDLコレステロールの酸化を防ぐ抗酸化ビタミンの豊富な野菜を
しっかり食べることも大切です。
コレステロール値は低ければよいわけでもない
コレステロールには悪玉コレステロールと善玉コレステロールがあります。
悪玉(LDL)は肝臓から血液に溶けて全身に運ばれていき、
細胞膜やホルモンの材料などに使われます。
このとき使い切れなかった余分なLDLを肝臓に戻すのが善玉(HDL)
の役目です。
そのためHDLが少ないと、血液中にLDLが過剰になり、粥腫が
作られるのを促進してしまいます。
心筋梗塞をおこした人の4分の1は、HDL(善玉)コレステロール値が低い
ということがわかっています。
なので、狭心症や心筋梗塞の再発を防ぐには、
ただ総コレステロール値を下げればよいのではなく、中身のバランスが
重要で、LDLコレステロールは減らして、HDLコレステロールは増やす
必要があるということです。
コレステロールは食品からの摂取と、肝臓での合成という2つのルートから、
血液中に運ばれます。
コレステロールを多く含む食品が問題視されますが、
実は、体内のコレステロールの70〜80%は体内で合成されています。
そのため最近は、ときにコレステロール値の多い食品をとっただけで
脂質異常症になるわけではないと言われていて、
合成の際に原料となる食べ物からとった脂質や糖質に注意を向けるべきという指摘もあります。
食品から直接とるコレステロールの割合は低いといっても
脂質異常症の人の場合は体内でコレステロールを調整するしくみが
くずれていることがあるので、コレステロールを多く含む食品は控える
必要があります。
コレステロール摂取量の目標は、1日300mg以下です。
LDLを減らし、HDLを増やすには、おもに肉類や乳製品に含まれる
飽和脂肪酸の摂取量を控え、EPAやDHAが豊富な魚や
コレステロールを体外に出す働きのある食物繊維を意識的に摂る
食生活がよいです。
また、酸化したLDLは血管壁を傷つけ動脈硬化を進行させるので
抗酸化作用のあるビタミンC、E、βカロテンなども欠かせません。
野菜や海藻、豆類、乾物類などをバランスよくとりましょう。
なお、コレステロールのバランスを保つには適度な運動も効果的で
よく歩く人はHDL(善玉)値が高いという調査結果があります。
(厚生労働省の平成14年国民栄養調査)
コレステロールの多い食品
コレステロールはおもに卵や魚卵、魚介類、レバーなどに多く含みます。
1食あたりのコレステロール量の目安
卵黄(中1個20g) 280mg かずのこ(塩蔵水戻し1個50g) 115mg
いか(2分の1杯80g) 216mg たらこ(2分の1腹40g) 140mg
からふとししゃも(3尾60g) 174mg 牛レバー(50g) 120mg
うなぎかば焼き(1串80g) 184mg いくら(30g) 144mg
鶏レバー(40g) 148mg くるまえび(1尾30g) 51mg
肥満について
生活習慣病の原因の1つで必ず取り上げられる肥満。
肥満は、血圧、コレステロール値、血糖値、のどれを改善するにも
体重管理が必要ですが、太っている人はやせるだけで
それぞれの数値が改善することがあります。
肥満の一番の原因は、食べ過ぎです。
糖尿病治療などでは、厳密に適正エネルギー量を守って
いかなくてはなりませんが、予備軍程度であれば、
腹8分目を心掛けることで、食べ過ぎを防ぐといいです。
また早食いは脳が満腹感をキャッチするまえに食べ過ぎてしまう
ので、ゆっくりよく噛むように意識しましょう。
もし、食べ過ぎてしまったら、翌日の食事で調整します。
ただ、食事量を減らしたときに注意しなければならないことは
栄養の質を落とさないようにするということ。
脂質は控えめにし、野菜や海藻、豆類などで、ビタミン・ミネラル・食物繊維
をしっかりとることが大切です。
なるべく少量の量で品目数を増やすと栄養のバランスをとりやすくなります。
また、食事は1日3回、決まった時間に摂るように意識しましょう。
食事回数を1日1〜2回だとか、食事時間が不規則だったり、
寝る直前に食べるなどの習慣は基礎代謝を落とし、余分な脂肪を
体にため込む原因となっています。
間食に食べるお菓子はエネルギー量の過剰、糖質や脂質の摂り過ぎ
に結び付き、血糖値やコレステロール値を上げる原因になります。
ガマンがストレスになることもありますが、
たまに食べる程度にして、基本的には間食は控えるようにします。
お酒はほどほどに
内外のさまざまな研究で、男性は、ほどほどの量の飲酒で
狭心症や心筋梗塞をおこす確率がさがり、女性では狭心症を
起こす確率が下がるという結果がでています。
適度な飲酒であれば、HDL(善玉)コレステロールを上昇させて
動脈硬化を予防するというデータもあります。
ですが、飲み過ぎは血圧を上昇させ、中性脂肪を増やします。
さらに食欲も増進させるのでエネルギー量の過剰を招くことにも。
ほどほどの量には個人差があるのですが、
一般的に適量とされているのは、1日にビールなら中ビン1本
日本酒なら1合、ワインならグラス2杯弱、焼酎(25度)ならコップ半分
ウイスキーならダブル1杯程度です。
これは1日に1種類を飲む場合の量で、種類が違えばよい
というものではありません。
飲み始めると適量では終わらない。
という人は、最初から飲まないほうが賢明です。
とくに狭心症をおこしている人に、適度の飲酒は厳禁です。
なぜかというと、アルコールには血管を拡張する働きがある一方で
アルコールを代謝する過程でできるアセトアルデヒドという物質に
血管を狭める作用があり、狭心症の発作を誘発する
危険性があるからです。
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